Our York Bar  
10≪ 2017| 12345678910111213141516171819202122232425262728293011/ ≫12
読了報告さくいんコーナー
数が増えてきたので作ってみました。
著者名(敬称略)は五十音順、書名の並びは任意です。
読了報告に記載されている情報は記事投稿当時のものですので、ご購入を検討される際には必ず最新の情報をご確認ください。
(各作者様、リンク等不都合ございましたらお手数ですがご一報くださいませ)

続きからどうぞ。
>> ReadMore
スポンサーサイト
2037'01'01(Thu)00:00 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】永坂暖日『嘘つき王女と隻腕の傭兵』
永坂暖日さん『嘘つき王女と隻腕の傭兵』を読みました。
テキレボ6での戦利品です。
11/23の文フリ東京でも入手できます! →D13 「夢想叙事」>『嘘つき王女と隻腕の傭兵』
感想前に大好きな映画の話から始めようかと思ったんですが、ちょっとオフが立て込んでおりますので今日は脱線せずに参ります。
いつもそうすりゃいいのにな!(笑)

「荒い呼吸をして空気が通るたび、喉がしみるように痛い。」(本文4ページ)

物語は、緊迫感に満ちた逃亡劇から始まります。
(痛覚や触覚など、全体を通して身体感覚に関する描写が印象的です)
王女イフェリカの祖国ヴェンレイディールは、先ごろ戦で隣国リューアティンに敗れ、王族はみな処刑されてしまいました。
魔法を学ぶためリューアティンに留学していたイフェリカも、懸賞金をかけられ命を狙われています。

イフェリカにはどうしても叶えたい望みがありました。
ヴェンレイディールのどこかにあるはずの、家族のお墓を見つけ出すことです。
しかしイフェリカはいまやお尋ね者。ひとりではとうてい祖国に帰れそうもありません。
そこで墓参りまでの護衛を依頼した相手が、傭兵のハルダーです。

「隻腕の傭兵」ハルダーの右腕は義手です。
過去の護衛依頼に失敗した際、ある強敵によって切り落とされてしまったためです。
義手を作ってくれた女魔術師キシルを通じて、ハルダーは(渋々)危険な護衛任務に身を投じることになります。

ハルダーが「隻腕の傭兵」なら、イフェリカが「嘘つき王女」なのだろう、と予想がつきますよね。
ところが、イフェリカは嘘つきとは程遠い正直者なのです。
「王女か?」と聞かれて「はい」と答えてしまいますし、偽名で呼ばれても返事できないと頑なに主張しさえします。
しかも冒頭では追手の目をくらますためにつかっていた魔法も、全然使いません。

これだけ書くと、イフェリカがわがままなお荷物ヒロインのように思われてしまうかもしれませんが、実際は健気でひたむきな、守るに値する少女として丁寧に描写されていて、むしろ「イフェリカには何か事情があるのかな? どうしてそこまでしてお墓参りがしたいんだろう? タイトルはどういう意味なんだろう?」と気になってしまいます。
そのへんをここで言及するのは野暮というものなので、どうぞ本編でお確かめください。
(わたしは完全にやられました。。。)

プロットの主軸はもちろんお墓探しですが、これはハルダーの再起の物語でもあると思います。
キシルが作ったハルダーの義手は、はじめ取り返しのつかない失敗の象徴として表れます。「守りきれなかったこと」に囚われていたハルダーが、イフェリカとの出会いを通じて「出会えたこと」そのものに目を向けられるようになっていく――物語が終わるとき、義手は序盤とは違った意味を持っています。
痛みは簡単に消えなくても、それでも少し前を向けるような幕引きに胸が熱くなりました。
文フリ東京に行かれる方、ぜひお手に取ってみてください。
(関西の方は、来年1月の文フリ京都でも手に入るかなと思います)
掛け値なしにおすすめですよ!
2017'11'15(Wed)23:29 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】永坂暖日『サボテンの子どもたち』
永坂暖日さん『サボテンの子どもたち』を読みました。
テキレボ6の戦利品です。
寺島家の三きょうだいを中心に展開する4編からなる連作短編集となっています。
こちらが永坂さんの 2017/11/23文学フリマ東京のカタログ です。
(しつこいようですが私も委託させていただいてます……)

感想文の前に、ひとによってインプット・アウトプットのしかたが違う、という話を。
(腕の組み方と手の組み方でどっちの手が上になるかで分かるとか、なんかそんなやつです←アバウト)
私は右脳で感覚的(なんとなく無根拠に)にインプット、左脳で論理的(理屈っぽく)にアウトプットする派らしいです。
そういうタイプの私が感想を書きます。前置き以上です。

ブラームスのワルツが聴きたくなった。
それが、『サボテンの子どもたち』読了後の感想です。
私が聴きたくなった曲はこちらです。全音さんの動画なので著作権も大丈夫なはず。

最近ではアフラックのCMにも使われていましたね。
短く素朴で、けれどもぬくもりに満ちた美しい曲で、私の大好きな曲のひとつです。
以上が右脳人間アワの感想でした。

ここから理屈っぽい阿波に補足説明させますね。(続きからです)
>> ReadMore
2017'11'03(Fri)00:07 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】並木陽『斜陽の国のルスダン』
並木陽さん『斜陽の国のルスダン』を読みました。
第0回静岡文学マルシェ (2016年6月) での戦利品です。
並木さんのご本を読んだのはこれが初めてです。
(ラジオドラマもありますが、とりあえずここでは原作についての読了報告です。)
※脱線しまくっているので感想文だけでいいわという方は次の赤字まで飛ばしてください……

ここを読みに来られる方にはいまさら紹介の必要もないでしょうが、13世紀のグルジア女王・ルスダンの波乱に満ちた生涯を描いた作品です。
「いまいちピンと来ないなあ」という方のために先に言っておきますと、当時のグルジアと日本との間には大きな共通点があるんですよ!

と、まるでグルジアの歴史に詳しいかのような口ぶりですが……(笑)
数年前まで、私のグルジアについての知識は、「たぶんヨーロッパの東のほうで、なんとなく名前くらいは聞いたことがあるかもしんない」という程度でした。
たぶん日本人の大半は、私と同じようなものではないかと勝手に思っています。

その国のことを日本では公式に「ジョージア」と呼ぶようになったと知ったのは、2015年末に「独裁者と小さな孫」という映画を観たときです。
架空の国の独裁者(おじいちゃん)と孫(女装ショタ)の逃避行を描いた作品でした。
小さな孫が言う「あーんちゅけび!」という言葉がいまでも耳に残っています。字幕は「明かりをつけろ」だったか「明かりを消せ」だったか忘れてしまいましたが……あれがジョージア語なのでしょうか。
この映画をきっかけに、ジョージアという国に少し親近感が湧いてきた時期に『斜陽の国のルスダン』の存在を知り、翌年6月の静マルで購入させていただきました。

ちなみに2016年には「みかんの丘」「とうもろこしの島」という2本のジョージア映画が公開されています。いずれも、ジョージアとアブハジアとの間で起きた紛争が背景にある作品です。
どちらもすごくいい映画だったんですが、個人的には「みかんの丘」のほうが見やすかったです。「とうもろこしの島」はセリフがとても少なく、映画館でウトウトしてしまった記憶があります……。
3本ともソフト化されていますので、興味のある方はぜひご覧になってください。

話は逸れましたが、ともかく、私にとってグルジアは非常に縁遠い国でした。
まして13世紀だなんて。
私は世界史もほとんど履修していませんし、当時のグルジアがどんな国だったのか全く知らない状態で、この本を手に取ったわけです。
世界史はさっぱりでも、日本史なら少し分かるかも、と学生時代の記憶を掘り起こしてみます。
鎌倉幕府の滅亡は1333年、「いちみさんざん」なんて暗記したなあ。13世紀というとその少し前か。
そういえばなんで鎌倉幕府って滅びたんだっけ――13世紀には、その一因となった大きな事件がありました。
そう、「元寇」です。げんこう!
(執権北条時宗が新刊を落として壁サーだった鎌倉幕府が崩壊するさまを想像し……ませんね)
日本は文永の役(1274)、弘安の役(1281)の二度にわたって元(モンゴル)の襲撃を受けました。
元と戦った御家人に褒美として所領を与えることができず、「御恩と奉公」が成立しなくなり鎌倉幕府滅亡の原因となった――というようなことが、私の教科書には書いてあった気がしますがいまはどうなのでしょう。

文永の役よりも少し前、グルジアもまたモンゴルの侵攻を受けています。
これが、先に書いた「グルジアと日本との大きな共通点」です。
日本では台風が来たおかげでモンゴル軍は敗退しましたが、グルジアではどうだったのでしょうか。
『斜陽の国のルスダン』は、ちょうどその時代を描いたお話です。
(ようやく続きから感想文です……)
>> ReadMore
2017'08'28(Mon)18:16 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】オカワダアキナ「猫を飼う」
オカワダアキナさんの「猫を飼う」を読みました。
オカワダさんの作品を読むのは、テキレボアンソロの「飛ぶ蟹」以来です。
タイトルを囲うカギカッコが『』ではなく「」なのは、本ではなくweb上で読んだからです。
(ご本はもう完売してしまったそうで、お持ちの方が非常にうらやましいです)

「ザネリ」というオカワダさんのサークル名は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に出てくる名前だそうですが、恥ずかしながらいまだまともに読んだことがありません。
「銀河鉄道の夜」については、私の小学生時代の担任が「人形劇を観たけど何がいいのかよく分からなかった」とディスっており、読書家の姉が「あの良さが分からないなんて、その先生まじセンスないな」とさらに先生をディスって、私の頭の中では先生(中年男性)vs読書家の姉(JK)の仁義なき戦いが繰り広げられていました。
(どうぞここで、あのトランペットの「ぱやや~~~、ぱやや~~~」というテーマ曲を流してください)

話が脱線しかしていません。
オカワダさんが書かれているのは「ジョバンニやカンパネルラになれないひとたちの物語」なので、「ザネリ」というサークル名になさったとのことで、私の中のザネリ君はオカワダさんが書かれる人物に似ているのかな、と勝手に思っています。
(※ザネリが男なのか女なのか、人間かどうかさえ知らないのですが、「銀河鉄道の夜」読むまであえてググらないでおくので、私に「ザネリっていうのはこういうキャラだよ」と教えないでくださいね。
ネタバレを吹き込むのはやめてください! 読んでない人だっているんですよ!!)
オカワダさんいわく、「年金払ってなさそうな人たち」。
「猫を飼う」の主人公鶴森ハルオも確かにそんな感じがします(笑)
現代社会の「ふつう」「まとも」といったメインストリームからはずれて、定職に就かず社会の歯車にはならず、かといって夢に向かって熱くひた向きに邁進するわけでもなく、どことなく不健全に生きているけど、たぶん善良な人たち。
いまのところそんなイメージです。

ここは私のブログだし、読了報告であって読書感想文ではないので、いくら話が脱線したって罪には問われないでしょうが、右上の×をクリックまたはタップする音が聞こえてきそうなので、いい加減話をもとに戻そうと思います。

「猫を飼う」は、東京都豊島区雑司ヶ谷周辺を舞台にした作品です。
主人公鶴森ハルオ(三十歳)は、作家を志望しつつもいまのところ名を成しておらず、国語の非常勤講師と、フリーペーパーの星占いコーナーを書くことで生計を立てていました。
ハルオは友人の亀山三四郎(漱石の主人公と同じ名前だ!)がクモ膜下出血で急逝したのを機に、非常勤講師を辞めて小説の執筆に取り組もうとします。が、思うように筆は進みません。
そんなある日、ハルオの部屋に佐藤ミユキと名乗る女性が猫を連れてやって来ます。ミユキはハルオが作った猫探しのチラシを見てやって来たと言うけれど、ハルオにはそんなチラシを作った覚えはありません。
ミユキが代わりの飼主を見つけてくるまで、ハルオは仕方なしに猫を引き取ることになって……、というお話です。
本作でまず読者の興味を牽引するのは「誰がハルオの名を騙ってチラシを作ったのか?」という犯人捜しのミステリーですが、そこに夢と現実を行き来するマジックリアリズム的要素(使い方があってるか不安です)が見事に融合しています。さらにちょっぴりクセのある登場人物たちとが相まって、どんどん先を読みたくなるお話でした。
(ここらで一旦畳みます。)
>> ReadMore
2017'07'29(Sat)20:27 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲