Our York Bar  
08≪ 2018| 12345678910111213141516171819202122232425262728293009/ ≫10
読了報告さくいんコーナー
・著者名(敬称略)は五十音順、書名の並びは任意です(刊行順や購入順にはなっていません)。
・アンソロジーは主宰(主催)された方のところに配してあります。
・記載されている情報は記事投稿当時のものですので、ご購入を検討される際には必ず最新の情報をご確認ください。
・Twitterで書いた短い感想が主で、ある程度長いものには★がついています。
 感想文の長短は書いた時期によるもので短いからといって大してスキではないということではないのでご了承ください。
(長いのは間違いなくスキです)
・各作者様、リンク等不都合ございましたらお手数ですがご一報くださいませ。

続きからどうぞ。
>> ReadMore
スポンサーサイト
2037'01'01(Thu)00:00 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】鈴山理市『スポットインザスポット』
鈴山理市さんの『スポットインザスポット』(上下巻)を読みました。
2018年1月の文フリ京都でおつかいしていただいた戦利品です。
(たこやきいちごさん、その節はどうもありがとうございました~)

舞台は1930年代のアメリカ(最近禁酒法が廃止された……というような描写が見えるので、1934~1935年頃でしょうか)。
田舎町ケリング・ヒルに現れた殺人ピエロ「赤襟」による、凄惨な連続殺人事件を描いた物語です。
文庫上下巻あわせて本文858頁(あとがき等含む)のWポータブル鈍器! ですが、比較的改行が多めで映像的にテンポよく進んでいくため、まだるっこしさは全然感じません。
サーカス団員、捜査官、マフィアや娼婦に新聞記者と登場人物がかなり多く視点も頻繁に切り替わるのに、読んでいて混乱しないのもすごくすごい(語彙)です。
優等生気質ながら心に底知れぬ闇を感じさせる捜査官シモンズといまひとつやる気のない相棒コリント、恐ろしいけれどなぜか心惹かれずにはいられない殺人鬼「赤襟」、負け知らずのギャンブラーで運び屋のロブ、美しいけれど笑顔を見せない「陶器姫」アメリー、コメディリリーフ的な役割の新聞記者アントニーなどなど、ひとりひとりのキャラクターが鮮やかに描き分けられているからでしょう。
(私はシモンズ&コリントとサーカス団の古株ジョエルが好きです)(コリントかわいいよコリント)


上巻は、サーカス団で起きた事件、一見関係なさそうなマフィアの麻薬取引のエピソードが絡み、読者は犯人は誰なのか、何が起こっているのか、注意深く読み進めることになるかと思います。
ミステリーなのでネタバレを極力回避したいところですが、これだけ言ってしまおう。えい。
なんと、犯人は上巻の終盤で明かされてしまうのです。
この時点でまだ400頁もある下巻が残っているんですよ。えっ、どうするの!? と思うじゃないですか。
大丈夫、本当に面白くなるのはここからです。
下巻では事件の真相が、目眩く人間ドラマとともに明かされていきます。
まさに「サスペンス映画のような」ミステリー。でも、たくさんの登場人物の心の襞を、映画でここまで表現するのはちょっと難しいでしょうね。もし映画にするならかなり端折られてしまう気がします。
「スポットインザスポット」におけるミステリーとしての醍醐味は、「犯人」who done it や「トリック」how done it よりも、「動機」why done it という人間の心にこそあり、それは同時に小説という媒体の醍醐味であると思います。
「赤襟」の凶行が猟奇的でおぞましいほどに、最後に見えてくる真実が眩く輝く、見事な物語でした。
まずお試しで上巻だけ……などと言わず、ぜひ上下巻セットでどうぞ!



2018'09'19(Wed)23:19 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】『Lacrime Rosse 吸血鬼作品集』
宮田秩早さん主宰の『Lacrime Rosse 吸血鬼作品集』を読みました。
こちらは『Crimson Regalia』につづく吸血鬼作品集の第三集です。
(ちなみに来年1月発行予定の第三集『viaggio notturno』には私もお招きいただいています。がんばります。)

つづきから、作品ごとの感想を簡単に書かせていただきます。




>> ReadMore
2018'08'10(Fri)23:13 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】『金継ぎ 修復と蘇生のアンソロジー』
オカワダアキナさん主催のアンソロジー『金継ぎ』を読みました。
文フリ東京(2018年5月開催)の戦利品です。
スピンつきのとてもきれいなご本なのですが、鞄の中に入れて少しずつ読んでいたらずいぶんくたくたになってしまいました。
扱いが雑で申し訳ないとは思いつつ、このご本はくたくたになるべきだと、そうして本棚に残っているべきだと、なぜか勝手に思ってしまいます。(すみません)

 金継ぎ(きんつぎ)とは、うつわの直しかたのひとつです。
 うつわの割れや欠けを漆で接着し、継いだところを金粉など
 で飾ってつくろいます。修理後の継ぎ目を「景色」とよび、
 新たな価値を見出します。破壊を歴史として受け入れること
 ともいえるでしょう。

(本文5ページより引用)

私はTwitterの前情報でこの題材について初めて目にしたとき、「破壊」という言葉についてただ安直に、例えば茶碗を落としてしまったときのような強い衝撃――人間に置き換えていうなら、その人を深く傷つけ苦しめる重大な出来事をイメージしていました。
けれども、茶碗が実際は目に見えずとも少しずつ疲労し消耗していて、やがてささいな衝撃で割れてしまうように、ここに揃った作品に描かれる「破壊」は、ゆるやかな傷みによるものが多かったように思います。
この日本における現行の社会通念上の「普通」から少しあぶれてしまった人たちに、大げさではないけれど確かに蓄積している小さな破壊に注がれる視線は、作家さんごとに着眼点は違ってもいずれもやさしく、そのことが『金継ぎ』を「明るい本」たらしめているようにも思います。

ごく個人的で的外れな感じ方でしょうが、作品たちは主催オカワダさんの「バイ・ミー」を原点Oとして、多次元的な点対称(正しい表現がわかりませんが)に配されているように思いました。
アナル開発のために頑張ってくれた女装おじさんの化粧のひび割れ(猿川西瓜さん「グロッタ」)を、どこか別の世界線でアル中の女が直す。(まりたつきほさん「夜明け」)
恋愛とは別のつながりをみつけた少年少女の交流(森瀬ユウさん「ヤドリギの葬式」)は、かつてコドモタチと触れ合ったときの記憶かもしれない。(磯崎愛さん「こどもたちのたそがれ、おとなたちのかはたれ」)
それらをゆるやかに石川月洛さんの各掌編が継いで『金継ぎ』ができている――そこに見える景色には、それぞれの「蘇生」を寿ぐように白い羽がひらひら舞う映像(オカワダアキナさん「バイ・ミー」)がおぼろげに重なるようです。

割れた器は、もとのすがたには戻りません。
過去の傷跡を、痛みの記憶を残したまま、それでも在り続けることに、つよさとわずかな切なさを思います。
同時に、継がれないままの傷もまた無数にあるのだろうと、少しは想像しながら、金色のスピンを最後のページに挟みました。
いつかふと思い出して、再びこの本を開くとき、きっとまた出番が来るでしょう。

2018'07'29(Sun)18:03 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】空想工房『カケラ vol.03』
カケラ vol.03

自分のサークルで出している会誌を戦利品といってよいのか?
いや、お原稿と戦っていたので間違いなく戦利品でしょう……。

ということでひとことずつ感想です。

アキトさん(表紙)
わーいアキトさんちのノディ君(ボーイのほう)とネネネちゃん(テレビ頭のガールのほう)がカケラに遊びに来てくれたよー!(*´ω`*)
余談ですが小田島さんに「アキトさんちの本編はどこにあるんですか?」と尋ねられて笑ってしまうなど……
私もあるなら読みたいけど、一枚絵でばっちり魅力的なキャラが作れるっていうのもすごいなーと改めて思うのでした。

KaLさん(漫画)「ContacT」
もうKaLさんがSF漫画を描いているというだけで感激……!
上下で分かれた誌面に、二人が出会うまでの経緯を描いてるのがすごくて漫画にはこういう表現もあるのかーと。
あとカデラがうつくしい~。

泡野瑤子(小説)「女神のまなざし/あなたは太陽」
自分のなので感想は省略。こんな心ときめくお題なのにまたロリコン医者を書いてしまった/(^o^)\アレー
タイトルは「『あなた』が太陽」という意味です(伝われ)。

かんじさん(漫画)「聖なる乙女を探して」
二人(匹?)がなぜ宇宙を飛んでいるのか?
そんなのカケラが今回SFでボーイミーツガールだからに決まってる。
さりげなく細かい描き込みがいっぱいですごい。
衝撃のオチでとても笑いました。にゃ~ん(*´ω`*)

小田島静流さん(小説)「宙からのリクエスト」
待ってましたテキレボアンソロの完全版!
ラジオ部分の表現が巧みで、「(エコー)」がなぜか妙にツボりました。
宇宙アドベンチャーで最高に楽しい! オウムの相棒キングが容赦なくてイイ味出してます。
(「インフィニティ」の「ローランド」ってまさか……?)

都岬美矢さん(漫画)「FAMILY」
人の心が読める盲目のローリーとテレパスのレティ、”家族”と呼べる人とのボーイミーツガール。
ローリーはその能力を通信士として利用されそうになってたということなんでしょうか。
盲導犬のミリーがかわいいです。

凪野基さん(小説)「戦士リーチャは踊らない」
SFだけどファンタジー感も楽しめて二倍おいしいナギノさんワールド!
美形の人魚リーチャすごくいい……でも最後には狼男ダールケがいいところを持っていく……(笑)(不憫)
(アホなので「アルカロイド」をググったなんて言えない)

杏烏龍さん(小説)「ひるさがりの天文部」
はじめは普通の現代学園モノ? と思いきや、しっかりSFでしっかりボーイミーツガールだった!
私の母校には天文部がなかったんですが、確かにちょっと他の部活や先生からは風当たり厳しそうですよね。
(何やってるの? とかオタクwとか思われてそう……)
市野瀬君の元の姿想像するとちょっと笑っちゃう……。


あとは小田島さんの装丁がかわいいし掲載順がとてもよい……。
宇宙モノ(地球外)が続いた後唯一地球が舞台になっていて、最後に帰ってきたなあ、という気持ちになりました。
「カケラ」は毎回漫画・イラスト・小説といったバラエティ豊かな作品が詰まっていて、巻末にはあとがきとQ&Aには執筆陣のこぼれ話などが載っているのも、「会誌」というスタイルならではの面白さかなと思います。
次はどんな本ができあがるだろうと、メンバーとしても毎回楽しみです。



2018'07'29(Sun)15:05 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲