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ムーンライト・ミンストレル/第1夜「兜の下にうつくしい女神」1
皆様、たいへん長らくお待たせいたしました。
もぞもぞ改稿しておりました「ムーンライト・ミンストレル」、
略してムーミンが復活、です。
な、長くてくるしかった……!
……うん、別に誰も待ってないとか言わなくていいよ! ボケだから!(ツッコみにくい)

まだサイト内に専用のページができるとこまで行ってないのですが、
なんとかこれで、今週も本編2本更新間に合いました~よかった~!


でも……とても中途半端なところで終わっているの……
主要メンバー誰も出てきてなっ(ぐふっ


もしよろしければ続きから読んでやってください。



 ちょっと、そこのあんた。
 そう、あんただよ、あんた。どうしたんだい、こんな綺麗な満月の夜に、独りでこんなところへ来るなんて。――おや? さてはあんた、このリオラントの生まれじゃないね?
 なんで分かるのかって、そりゃあ――まあそんなことはどうでもいいんだよ。
 実はね、私もいま独りなんだ、ちょっと付き合ってもらえないかね?
 なあに、あんたはそこで、私の歌と話を聞いてくれるだけでいいんだ。すごくいい歌物語があるんだよ。それも、他のどの吟遊詩人も知らない、とっておきさ。きっと損はさせないと思うよ?
 どうだい、聞いてみたくなっただろう?
 よし……それじゃあ始めようか、満月に導かれた人間たちの物語――そう、ちょうど今の私とあんたのように、ね。



Moonlight Minstrel



月はすべてをしっている

戦場の上に月は浮かび
なにもいわずに、てらしていた
敵を蹴散らす将軍様の
兜の下にうつくしい女神


 あなたは知らぬだろうが、かつてこの大陸では、満月は神の化身だといわれていた。 
 その頃、月が地上に投げるのは光ではなく、闇だった。夜は、月がこの世で絶対無二の存在であることを知らしめるためにある。月はこのリオラントの山々、木々、人々、あまねく全てのものを墨色に染め、遥か高みから地上を睥睨していた。人間は、昼の太陽の下でしか、活動する自由を与えられていない弱い生き物だった。
 しかし人間は、やがて火によって神に抗う術を覚えた。夜の暗闇の中でも、火を明かりとして行動することを知った。時代が流れより火を明かりとして自由に操れるようになると、人間はだんだんと闇夜を恐れなくなっていった。しかし、言うまでもなく、火がもたらしたものはそれだけではなかった。火は人間にとってこの上なく有用な道具となった――おそらく、あなたの生まれたところでも、そうであったろうと思う。
 だが、もとより火は、神の道具である。人間が何の代償も払わずに、それを使いこなせようはずもなかった。
 リオラント大陸の中央部に、ゼアテマという王国があった。この国は、たいへん小さな国だったが、非常に豊かな国であった。国中の山々が、金銀の鉱石を大量に埋蔵していたのである。既に人間は、それらを加工し利用する技術を、火の力によって得ていた。ゼアテマの人々は、良質の金銀を外国へ輸出し、莫大な富を手にしていた。
 火が技術を生み、技術が富を生み、そして富は争いを生む。それが、火を手にした人類が払った代償であった。つまり、そのような宝の山を、ゼアテマ周辺の国々が見過ごすわけがなかったということである。


 満月が地上に薄闇を投げかけ始めた頃、レアゼン山上に篝火が灯り、ボンサンジェリー公国軍はその威容を見せ付けた。
 麓には、隣国ゼアテマの砦が見えている。あれを攻め落とすのが、このたびの彼らの使命だ。
かつては銀鉱山の町として栄えていたこのレアゼン地域は、外敵からの侵略に幾度となくさらされ、ゼアテマは銀を掘り尽さぬまま町を放棄せざるを得なくなっていた。代わりにこの地には石造りの巨大な出城が建てられ、ゼアテマの国防の最前線基地となっていた。
「出撃準備、万事整っております」
 兵士長が、豪奢な鎧を纏った、端正な顔立ちの青年へ駆け寄ってきた。この青年が、ボンサンジェリー軍を率いる、若き皇太子イハールその人だった。彼は報告を受けて静かに頷く。
「皆、進め。この戦いの勝利は、我が祖国に繁栄をもたらす」
 鬨の声が上がった。ボンサンジェリー軍の先鋒三千が一気呵成に山上から麓へと駆け下りた。逆落としの勢いを駆って、平地で待ち構えるゼアテマ軍よりも有利に戦を展開できると、イハールは考えていた。
 しかし三十分と経たぬうちに、イハールはそれが大きな過ちだと気付くことになった。先鋒が既に大敗を喫して壊滅状態にあることを、斥候が伝えに来たからだった。
 斥候の報告によると進軍路に落石や倒木が発生して、先鋒は大きな被害を受けたばかりか二つに分断されてしまった。なんとか麓までたどり着けた部隊も、進退窮まって士気を著しく沮喪し、もはや収拾が付かない状態に陥っているという。
 イハールは聡明な指揮官であった。戦地の地形は前もって入念に調査し尽くしたつもりだった。その上で、逆落としの進軍路を確保できる場所に布陣したはずだったのだが、調べが足りなかったということなのだろうか。
 すぐに、イハールは判断を下した。
「……残念だか、先鋒隊の救出は諦めざるを得ない。進軍路が封鎖されてしまった以上、我々はこれ以上進軍できない。すぐに軍をまとめて、本国へ引き返そう」
「なんと、撤退するのですか!? 北へ迂回すれば別の進軍路を確保できるのでは?」
 隣に控えていた副将の進言に、イハールはしかし首を振った。
「敵は、先鋒を狙って倒木を起こした。しかし本来なら、本隊の通過するときを狙う方が大きな効果を見込めるはずだ。なぜだと思う」
「我が本隊自体に進軍させぬ為に、でしょうか?」
「そう、私はそう思っている。我々が迂回路を取ったとしたら、そこにはもっと大きな罠が仕組まれているはずだ」
 別の副将が唸った。
「しかし、撤退すればわが国王陛下の期待を裏切ることになる。なんとか攻め手は見つけられぬのものか」
「そうですよ、皇太子殿下。迂回路に罠があるとも限りません。斥候を出して調べさせてはどうですか」
「倒木にしても、ただ単に、敵が計略の好機を見誤った、とは考えられませぬか?」
 副将たちが口々に迂回しての進軍を訴える。だが、
「絶対有り得ない」
 イハールはこれらを強い口調で否定した。
「なぜなら、相手はあの『戦場の女神』だから」
 その一言で、ボンサンジェリー軍の中に異を唱える者は、誰もいなくなった。


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2011'06'05(Sun)21:12 [ 本編/ムーンライト・ミンストレル ] . . TOP ▲
    


     


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