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ヴェトラフ・ウント・クラフ5「ザイン・フロイント」1
今週2本目の本編更新です。目標達成3週目。
また前章「ヒルフローゼ・レーゲン」も、サイトのほうに格納いたしました。
まとめて読んでやるよという方はどうぞ。

下に拍手のおへんじもあります!
サイレントパチパチもありがとうございます!

最近すっかりヒト様のお尻に火をつけて回る放火魔(=更新楽しみにしすぎて焦らせる)と
化している私でございますが(良い子はやっちゃダメ)、
「楽しみにしてる!」「楽しみにしてる!」と言って回るより、
自ら尻にファイアーしていっぱい更新すれば皆様も張り切って更新してくれるのではないかな!
とふと思ったりもしました。北風と太陽的な。……ちょっと違うか。
それならわたくし、進んで尻から火だるまになる所存であります!!!!!ゴゴゴゴゴ

そのまま灰燼に帰して来いという話だった。



今回のタイトルはドイツ語「彼の友達」でした。
誰のことなのかはもうちょっと先で出てきます。
今回はカラス警部の視点から。


続きからどうぞ。


 クラフがヴェトラフに誘拐された翌日、本庁から捜査五課「特殊能力捜査隊」に本格的に捜査命令が下された。
 私が課長を務める捜査五課は、正式には「特殊能力捜査隊」というが、これは正式名称でありながら、警察内部、それもごく一部の関係者の間でしか通じないものである。何故ならば、この「特殊能力」というものが如何なるものか、一般に広く知れ渡っては困るものであるからだ。だから一般には「捜査五課」という仮の名前で通している。
 ここでいう「特殊能力」とは、簡単に言えば「超能力」の類で、常識では考えられない能力を持った捜査官が集まっているのが「特能隊」である。
 どういうメカニズムで、特殊能力が発現するのかは定かではない。だが、特殊能力に目覚めた人間は、皆何か激しい「罪」の意識に呵責されるような経験の直後に、その力に目覚めているという共通点があることだけが分かっている。
 このことから、「罪」によって目覚めた特殊能力を持った人間のことを、「ペカドール」と呼んでいる。元来は「罪人」という意味の、警察内部での隠語である。勿論、我々が追っているヴェトラフも「ペカドール」の一人だ。
 かくいう私も、「ペカドール」である。「罪人」が罪人を追っているのだ。皮肉で嫌な呼び名だが、もう既に定着してしまっているものを今更どうしようもない。
 ヴェトラフはあの通り、鳥人である。死刑の日に脱走し続けてこられたのは、彼が鳥となって空を飛び回ることが出来るからなのだろう。如何に厳重な刑務所でも、空にまで蓋をすることは出来ない。巨大な鷹の姿に変化して暴れ回れば、人間も牢獄の鉄格子も一溜まりもないのだ。かと言って、軍を動かせば騒ぎになり、政府が何としても隠匿したいヴェトラフの存在が公になってしまう恐れがある。警察本庁は業を煮やし、この最強の「罪人」を捕らえるために、捜査五課を組織した。
 ――といっても、捜査五課というのはもともと、情報収集や鑑識に関する特殊能力者の集まりだった。私のように、指で物体が切れるような、実地の刑事は今のところ他には居ない。だから、ザグリン支署に力を借りている。
「ヴェトラフの手がかり、つかめませんね……」
 パソコンのディスプレイに張り付いて、溜息を吐いているのは、ザグリン支署の捜査一課から回された、ロエヴェという新米刑事だ。一番真面目で口が堅く、決して捜査機密を漏らさない刑事がいいという私の注文に、もっとも適した人材という事でここにいる。ヴェトラフが鳥人であることを知っているのは、ザグリン支署では署長とロエヴェの二人だけである。
 ロエヴェは「ペカドール」ではない。だが、大学時代には射撃競技でほぼ百発百中という、圧倒的な成績を残して全国優勝したらしい。刑事になってからも、射撃訓練ではいつもトップの成績だと聞いた。そういう意味では、ロエヴェも特殊能力者ではあるかもしれない。
「仕方ない。写真も使えなければ、まさか『馬のような大きさの鷹が飛んでいるのを見ませんでしたか』などと、聞ける訳がない」
 ヴェトラフについては殆ど一般の国民に明かされていない。警察関係者でも、知っているのは捜査に携わっているごく一部の人間だけだ。たとえ名を伏せたとしても、ヴェトラフの顔写真を使って聞き込みすることは禁止されている。巨大な鳥に変身できることも勿論捜査機密だ。それは国からの命令である。理由は詳しく知らないが、まあ、我々のような「ペカドール」の存在が公になっては困るという事なのだろうと推測は出来る。
 だから我々は、警察へ寄せられる膨大な数の通報からそれらしいものを探して、虱潰しに当たってみるしかないのが現状だ。
 しかしヴェトラフも愚かではない。多くの人に目撃されるような場所や時間帯に、鳥に変化するようなことはあまり無い。よしんば目撃者が通報してきたとしても、電話を受けた警官がヴェトラフの事を知らないので、イタズラだと思って黙殺することの方が多い。
「モンダイン通りで少年を抱えた男が空を飛んでいたのを見たという通報ならいくつかありますが、それなら我々が一番よく見ていましたしね」
「……そうだな」
 私の顔を見て、ロエヴェがすみません、とまた謝った。余程、今の私はひどい顔をしているに違いない。
「捜査五課に、情報収集の能力を持った人はいないんですか?」
 いい加減この作業に飽きたらしく、ロエヴェはぼやき始める。
「居たな。今までに3人居た」
「じゃあその人たちに協力してもらっては……?」
「居たが、皆死んだ」
 ロエヴェは眼を丸くした。
「えっ? ――殉職、ですか?」
 私は首を振る。彼らは誰一人、ヴェトラフに殺されてなどいない。それどころか、ヴェトラフと出会ってさえもいない。
「一人は自宅で青酸カリを呷って自殺。一人は親戚の結婚式で飲みすぎて急性アル中で死んだ。もう一人は交通事故」
「死因がバラバラですね……。事件性はないのでしょうか?」
「所轄署はそう判断した。御陰で、たまに人事局が優れた情報収集能力を持ったペカドールを探して声をかけても、全員に断られてしまう」
 彼らは私たちがいくら隠したところで、今までに捜査五課で情報収集を請け負っていた人間が皆死んだという情報を収集するだけの特殊能力を持っているからだ、と説明すると、ロエヴェはいたく納得していた。
「死んでもいいから入隊したいという変わり者が見つかるまで、この作業を続けるしかないという事だな」
 渋々ロエヴェは返事をして、また膨大なデータと睨めっこを始めた。
 ただ、一つだけ、ロエヴェに黙っていたことがある。
 交通事故で死んだ捜査官の男は、突然赤信号の車道に飛び出して車に轢かれた。司法解剖の結果、体内から多量の覚醒剤が検出された。どうやら、幻覚を見ていたらしい。
 青酸カリ、アルコール、覚醒剤――彼らは皆、何らかの薬物によって死んでいる。
 これが本当に、偶然だろうか?

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2011'06'12(Sun)18:29 [ 本編/ヴェトラフ・ウント・クラフ ] . . TOP ▲