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ヘヴンズ・セヴン外伝「騎士団長就任の夜」
この下に拍手おへんじもあります。


今日は6月14日。
ヘヴンズ・セヴンにおいては「6月14日の政変」が起きた日。
先のアレスティア国王がイゼルレアによって暗殺され、
アシュリオは王位継承権を失いました。

本編の更新はちょっと横においといて、
今日は外伝SSをお届けします。
こないだケンペル誕生日SSを見事に落としたので、それと兼用で……
政変後、アシュリオが流刑になってから1ヶ月くらい後のお話。

*おまけクイズ*
「この一文書きたくないなぁ」と一文がいくつか下のSSにあります。
その中でも一番イヤイヤ書いた一文はどこでしょう!
ヒント:わたしの表現力がもっとあれば要らなかった一文でした。。。

※当たった人には私からチャッカマンが贈られます(シュボッ ジジジジ



……勝手にコゲついてろ!



続きから。


騎士団長就任の夜

 
「就任式もつつがなく済んで何よりだ。暴漢のひとりふたり、現れてもおかしくないと思っておったぞ」
 先の政変で王位を簒奪した新しい女王、イゼルレア・デリネルドーンは、ゆったりとした白絹の寝巻を纏い、紅色の扇子を広げて優雅に夕涼みの時間を楽しんでいた。
「ありがとうございます。これも、女王陛下の御威光あってこそかと」
「よく言う」
 女王の寝室に、ひとり呼び出された新しい騎士団長。照明は、ふたりの間にランプが一つぼんやりと灯っているだけ。薄闇の中、互いの表情は明かされないままの密談――それはそのまま、ふたりの心を表しているかのようだ。
「しかし、おぬしがわらわに従うとはな――どういった風の吹き回しじゃ」
 先に相手の腹に刃を突きつけたのは、女王の方だった。
「女王陛下がお作りになる新しき御世に、我が身命を賭したく存じましたので」
「フン、ぬけぬけと……食えん奴め。なぜおぬしはクレシアへ行かなんだ? 富を惜しんだか? 家名を惜しんだか? それとも――」
 女王は扇子を閉じ、いきなり立ち上がって騎士の脇腹を強かに打つ。
「この傷では、クレシアへの長旅に耐えられぬからか?」
 騎士は一瞬顔を歪めたが、すぐに微笑を浮かべて答えた。
「うまく隠しおおせているかと思っておりました。さすがは女王陛下」
「たわけめ。毎日そのような顔色で登城して参って、気付かぬほうがどうかしておる」
「あいにく私は嫌われておりますので、陛下以外のどなたからも気を遣って頂けないようです」
 その口調には、内容ほどには自嘲的な響きはない。それまでよりも少しくだけた調子で騎士は笑った。それは先の月光戦争で、王子を庇って受けた刀傷だろう。自らを盾として王子を守り続けたその体は、もう治癒魔法を受け付けなくなっている。
「しかし陛下にお仕えすることを決心しましたのと、この傷とは関係がございません」
「では、なにゆえじゃ」
「先ほど申し上げました通りでございます」
「わらわを怒らせたいのか? キース・ケンペル」
「滅相もございません」
「ならば言え。ほんの一ヶ月前には命を懸けてまでアシュリオを救おうとしたおぬしが、わらわに忠誠を誓うなどと申してもやすやすと信じられるものか。わらわの騎士であると申すならば、いまここでその本心を明かすのじゃ!」
 ランプの炎が激しく揺れた。
 金の髪、青い瞳、精悍な顔つき。女王は、いつも険しい表情を浮かべていた、厳格な先々代の騎士団長を思い出す。その息子である彼は父に生き写しだ。その父も鬼の形相の下に、本当の姿を隠していた。息子は、動じぬ鉄の仮面の下に何を隠しているのだろうか。
 沈黙が続いた。騎士が答えないからだ。女王もその意味を胸の内で図るから、黙る。
「陛下」
 女王が背を向けたとき、騎士はようやく答えた。
「私は、全て存じ上げております」
 女王は再び振り返った。騎士の青い瞳はまっすぐに自分の瞳を見つめ返していた。その瞳に自分の姿が映ったとき、今は亡き人の姿が重なる。
「……何のことを申しておる」
 とぼけるつもりが、女王の声が思いがけず上ずった。
「陛下は、本当はお優しい方だということです。私の傷まで労ってくださる」
「もうよい。……そういう冗談は好かぬ」
 騎士はやはり動じない。腹の探り合いは、女王の敗北に終わった。
「さて、そろそろ夜も更けて参りました。早々にお暇せねば、噂好きの連中に油を注いでやることになりかねませんな」
「おぬしが本音を言わぬからじゃ。あらぬ噂も立つし嫌われもする」
「私はともかく、陛下の名誉を徒に傷つけるべきではございますまい」
 颯爽と立ち上がる騎士。白いマントを翻すと、ランプの炎がまた揺れた。
「気に入らんな。キース・ケンペル。おぬしを二週間の自宅謹慎とする」
 騎士の驚く顔を、女王は今日初めて見ることが出来た。その顔に満足気な笑みが浮かんだ、と思うとそれは一瞬で消し飛び、冷酷な瞳で突き放したようにこう言った。
「騎士団長が手負いの役立たずでは困る。ゆめゆめ養生せよ。謹慎が解けた後、おぬしにはわらわの手足となってもらう」
「女王陛下の、仰せのままに」
 そのとき、騎士は笑っていなかった。女王の命令が、優しさや気遣いから出たものではないと理解している証拠だった。そしてそれが女王の意に添った答え方だったことは、言うまでもないだろう。

 一ヶ月以上も空位が続いたアレスティア騎士団長の座は、今日ようやく、キース・ケンペルに明け渡された。しかし、団長が就任と同時に二週間の自宅謹慎を命じられる事は、アレスティア騎士団史上初めての、異例の事態であった。

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2011'06'14(Tue)22:39 [ 普通の記事 ] . . TOP ▲
    


     


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