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ヘヴンズ・セヴン/第4章「不良聖人」2
今週1本目の本編です。

そんなことより(そんなことって)
アンソロが無事入稿されたとのことで! わー……!!
おめでとうございますお疲れ様でしたー!
主催のKさんの入稿速報をツイッタで見て、歓喜のあまり会社で尻が12センチほど浮いた――
とツイッタで書きましたが嘘でした。立ってました。リアルにガタッしました。
立ったはいいものの、会社ではこの喜びの行き場がなくて、すぐ座りました(笑)

同人誌とはいえ、私の書いたものがお金を払って買う本に載るってすごいありがたいなぁと
しみじみ思うのでありました。
わー。でも皆に読み飛ばされればいいと思う(笑)

(と、こんなことを書いているとき、Kさんからアンソロ別冊もできたとの情報が!
 すばらしい! おつかれさまです!)


さてさて本編でした。
あっ 需要はないと思いますが前回のおまけクイズの答えと解説(?)も入ってます。

2.

 エイセン、と呼ばれたその男は、僧侶らしさとは大きく隔たった、甚だ物騒な風体をしていた。一本も髪が生えていない頭だけは僧侶らしいともいえなくはないが、弓と槍を担ぎ上げた体は、鍛錬を怠らない兵士のようによく引き締まっていた。そして、何を相手に戦ってきたのか、その頭や体にあちこちに切り傷や青あざをつくっている。纏った若草色の僧衣にも、手にした鉄の槍にも、ところどころに赤い血がこびりついていた。
 アシュリオは呆然と、その姿を見つめていた。
(似ている)
 強い魔力を秘めた紫の瞳と、長い顎と、その声。しかしアシュリオの脳裏に浮かんでいるのは、もっと高貴で気品に満ち、そして、絶対にここに居るはずのない人物だった。
「あれ、お客様がおいでかい? ようこそ、アルトゥール僧院という名の牢獄へ」
 つるつるの頭を撫でながら、ふざけた口調で下品に笑うこの男に、ティエルはいささか不快そうな顔をしていた。ゼノはほとんど無反応だ。
「影閃! また狩りへ出かけたのですか!?」
「おうよ」
 影閃は愛想よく笑って答えた。
「今日も大猟だったぜ」
 ミィナが机を叩いて叫んだ。
「影閃! 殺生は戒律で禁止されています! 戒律を破ってはならないと、あれほど注意したのに! しかもあなた、また反省室を脱走しましたね!? いったいどこからどうやって……」
 ミィナは今までの穏やかな姿とは裏腹に、ものすごい剣幕で怒鳴り出した。影閃は取り合う様子もなく、ヘラヘラしながらそれらを受け流していた。しかしその顔に、苦しそうな汗の粒が浮いていることに、アシュリオは気付いた。
「大丈夫?」
 アシュリオは見かねて、ミィナの説教に割って入った。
「え?」
 アシュリオはすっと立ち上がり、軽く影閃のわき腹を触った。
「いてててててっ! いてぇな! おい、いきなり何しやがんだよ!」
「やっぱり、折れてるよ。早く手当てをした方がいい。ずっと我慢してたんだろう?」
「あんた……」
 影閃はアシュリオに何か言おうとしたが、ミィナの叫びがそれを遮った。
「何ですって!? 影閃、それをなぜ早く言わないのです!」
 言う気があったとしても、その暇を与えなかったのはミィナの方なのだが、ともかくミィナは治癒魔法を唱え始めた。
「神々よ、傷つきし哀れな子らに恵みをたれ給え――命のよたびいつたびまでは。『ヒール』」
 詠唱と共に、温かい魔力が影閃を包んだ。彼の体がぼんやり光ったかと思うと、体中の傷は跡形もなく消え去っていた。
「おおっ! さすがは大僧正! ありがとな! じゃっ」
 治療が終わるや否や、影閃はさっさとミィナに背を向けた。
「待ちなさい影閃! どこへ行くつもりですか!?」
「今度はこんなヘマはしねぇ、もう一狩り行ってくらぁ。――そうそう、お客さんよ。うちの僧院に出家するなんて、マジでやめといた方がいいぜ。戒律、戒律でうるせぇからよ」
 ドアを勢い良く閉められて、ミィナは反論できなかった。影閃の姿はその向こうに消えた。
「へぇ、ここにはああいう方も、いらっしゃるのね」
 ティエルが皮肉めいた調子で言うと、ミィナは悲しげにうつむいた。
「すみません。影閃は……本当は優しい人なのですが」
「彼はずっとここの僧院に居るのですか? ええと……大僧正様と同じくらいの年頃に見えますが」
 アシュリオが尋ねた。それは影閃と、彼に似た高貴な人物とが同一人物でないことを確かめるための質問だ。
「ええ。影閃は前の大僧正が拾ってきた捨て子なのだそうです。彼とは、幼い頃両親を亡くした私がこの僧院に入ったときからの付き合いですわ」
 それならやはり、影閃はアシュリオの思っていた人物とは違う人間だ。他人の空似に違いない。
 影閃と、月光帝国最後の皇帝――ユエターチュンとは。


「とんでもなく遠いところまで来ちゃったわね」
 ミィナの部屋から出た後、ティエルがため息をつきながら言った。再び白い廊下を歩きながら、これからどうするかを話し合う。
「ま、別に構わないんだけど。元々家出するつもりで出てきたわけだし……」
「ティエルやゼノはどうするつもりなの? ここに出家するの?」
 アシュリオの質問に対して、二人はあっさり首を振った。
「まさか! 毎日毎日僧院に閉じこもって修行するなんて、それじゃあクレシアにいた頃よりよっぽど退屈じゃない」
「俺は戦時下の軍人だぞ。殺生禁止とは無縁だ」
 そうだろうと思った、とアシュリオが言うと、ティエルが怪訝な顔をした。
「なあに、あなた? もしかして、ここに出家してもいいと思ってるわけ?」
「いや、だって大僧正様が言ってただろ。必ずしも僧になる必要はない、って」
「そういえば。――それってお言葉に甘えて、ずっとお客さんとしてここにご厄介になってもいいってことなのかしら?」
「無知だな、お前たちは」
 二人が口にした虫の良い考えを、ゼノがばっさりと斬り捨てた。
「僧にならなくてもいい、というのは、僧にならないのなら金を出せという意味に決まっているじゃないか」
「ええっ!? そうなの!?」
 アシュリオが思わず叫んだ。すれ違う僧侶が振り返っていく。
「当然だ。誰がタダ飯食らいを置いておくものか。それに、出家するにしても恐らく何かにつけて金を取るはずだ。布施とか喜捨とか、そういうものがなければ、宗教団体などすぐ立ち行かなくなる」
「でも、とてもあの大僧正さんはそんな風に見えなかったわ」
「あの女は言った、『あなたが求めるならば』、と。お前は欲しいものを買うとき、金を出して『買い求める』だろう?」
 ゼノに言われて、ティエルは「なるほど」と唸った。
「う~ん……でも、さっきの影閃ってやつは、どうなんだろう? あいつが真面目に修行とか、お布施とか、やってるようにはとても見えないけど」
 あんなのもいるんだから、俺たちもお金を払わなくていいのかもしれないよ、と言う暇を与えず、ティエルが言葉をかぶせてきた。
「あの人は特別扱いなんじゃない? えらい人が拾ってきた捨て子だっていうし。だからやりたい放題なのよ、きっと」
アシュリオはため息をついた。
「地獄だけじゃなくて、天国の沙汰も金次第ということなのね……」
 王子様ではない人間になって、身に染みて分かったことが一つある。
 この世はどこに行っても、金、金、金なのだ。




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*おまけクイズの答え*

意味なく反転。

一番書きたくなかったのは~……
女王の命令が、優しさや気遣いから出たものではないと理解している証拠だった。
でした!

理由も反転。

それより前のケンペルのセリフ「陛下は、本当はお優しい方だということです」に対し
イゼルレアは「そういう冗談は好かぬ」と返している。
これで腹の探り合いにイゼルレアが負けたというのだから、
イゼルレアとしては、自分が優しいとも思っていないし、
当然ケンペルが本気で自分のことを優しいと思っているわけがない、
その点においてはお互い理解し合っていると分かる……はずなのでした。

そんなわけなので、イゼルレアが出した謹慎の命令も、
優しさや気遣いから出たものではないのでした。
そもそもケンペルに対して「動じぬ鉄の仮面の下に何を隠しているのだろうか」と
思っているので、まだイゼルレアは彼のことを信用しきってはいない状態っぽいです。

ほかにもいろいろと背景がありますが、
このSSから読み取れるのはそのくらいかな……。
しかし、その読解には無理がある気がして、伝えきる自信がいまひとつ私にはなかったので、
上記のような文章を泣く泣く書き足したのでした。そんなわけでした。


ううーん……大人の駆け引きって難しい……。
いい表現ができない。

さあ!
正解者の君にはチャッカマンをあげよう!(ボボッ シュボボボボボボ)

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2011'06'17(Fri)00:17 [ 本編/ヘヴンズ・セヴン ] . . TOP ▲