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ヴェトラフ・ウント・クラフ/4「ザイン・フロイント」2
どうにかこうにか今週2本目の本編です。
今週はムーミンを更新しようと思っていたのですが、
この土日意外とバタバタしていて原稿が間に合いませんでした!
なのでまたVUKです。
もうストックがあまりなくなってきました……
かきかけのムーミンはまた来週に回そうと思います。ぐふっ。

拍手にて素晴らしい頂き物をもらっていました!
気付くの遅くてごめんなさいー!!
明日きちんとお返事させてください!!


さて、今回の公開分からVUKは、旧サイトでも公開したことがないストーリーに入ります。
やっとVUKは過去に追いつきました。

※今回、原稿内に昨今のご時勢上公開しづらい描写があったため、大幅にカットせざるを得ず、
 いつもよりだいぶ短めになってしまっております。



今回はタイトルにある「彼の友人」がちょっとだけ、初登場。
続きからどうぞ。

Krav


 鳥になったヴェトラフが舞い降りた場所は、さびれた灰色のビルの上だった。5階建てくらいだろうか。元々はアパートだったかのようなつくりだったけど、今は誰も住んでいないようだった。
 ヴェトラフは首をしきりに右へ振った。その方向に非常階段がある。先に下りろと言っているようだ。僕はそのとおりにした。ヴェトラフは後から追いかけて来なかったのに、すっかり人間の姿に戻って僕よりも先に下に着いていた。それもそのはず、ヴェトラフは背中から翼を出すこともできるのだった。
「遅かったな、ボウズ」
 ヴェトラフが鼻で笑った。
「それはどうも悪かったね。お前みたいに、便利な体のつくりはしてないんだ」
 僕がやけばちにそう言うと、ヴェトラフは上機嫌に笑い出した。こんな奴に、僕を下まで運んでくれる優しさを期待するのは、ばかげているというものだ。
「これから僕をどうするつもり?」
「本当にうるさい奴だな。殺すぞ」
 そう言いながらもヴェトラフはなぜか楽しそうに見えた。
 階段のあった裏路地から、少し大きな通りに出た。歩きながら、あたりを見回す。錆びて斜めに傾いた道路標識から、ここがワルコワのどこかであるということが分かる。僕ら以外には誰も歩いていない。首都だというのに、信じられないくらい人気のないところだった。もう、通勤や通学の人が歩いていてもいい時間帯のはずなのに。
 たぶん、北のほうに向かっていたと思う。道中、何かの工場か研究所のような、かなり大きな建物が見えた。でも、外壁には蔦がびっしり絡まりつき、建物の名前が書いてあるはずのプレートも読めない。門の前に立っている「立入禁止」の札だけはピカピカしている。これはいったい何の建物だろうか?
「ねえ、どこまで行くの?」
 僕は思わず聞いた。自分でも情けなくなるほどか細い声になっていた。
 ヴェトラフはまた鼻で笑った。本当にいやな奴だ。
「着いたぞ」
 怪しい建物を通り過ぎてから、ほんの2、3分のことだった。目の前に、今度は、黄色っぽくくすんだ、古いビルが建っていた。

「売ります・買います 名盤・廃盤 
 古今東西なんでもそろう
 通のあなたのための店
 キンバックス・レコード」

 1階の玄関の前に、そんな看板が置いてあった。レコードショップ? こんな、人通りの少ない場所で?
 ヴェトラフはそこのドアを開けた。僕も続いて中に入っていく。
 まだ開店前なのか、店内は薄暗い。内装はとてもきれいとはいえなかったけど、レコードとCDがぎっしり詰まった棚がたくさん並んでいて、全部きっちりアルファベット順に並んでいる。古めかしいけどおしゃれなポップスが、小さい音量で流れていた。僕は音楽にさほど詳しいわけじゃないけど、なかなかセンスのよさそうな店だと感じた。
 奥の方に店員さんの後姿があった。真っ赤な長髪を束ねた、ヴェトラフと同じくらいか、もっと背の高い店員さんだ。カウンターの向こうでハタキを持っている。掃除をしているところのようだった。
「お客さーん、まだ入ってきちゃだめッスよ、 お店は午前11時からで……」
 なれなれしい口調で振り向いた店員さんは、ヴェトラフの顔を見るなり叫び声を上げた。
「ヴェトラフ!! ヴェトラフだ!! 帰ってきたんスね!!」
 そして、カウンターを軽々飛び越えて、ヴェトラフに抱きついてきた。
「お前は相変わらずだな、ヴェンゾール」
 せめてハタキはどけろ、とヴェトラフが迷惑そうに言った。
 それは、まったく信じられないことだった。
 この史上最悪の犯罪者には、なんと友達がいたんだ。

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2011'06'19(Sun)23:20 [ 本編/ヴェトラフ・ウント・クラフ ] . . TOP ▲