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ヘヴンズ・セヴン/第4章「不良聖人」4
本編の更新を週1本にしても危うく落とすところでした……。

最近読書熱が再燃してます。めらめら。
ラノベ強化月間中。

好きな本30冊にラノベが少ないようですが、
興味がないのではなくむしろ読みたいのがたくさんあります。
フィクションならなんでも好きです。
大阪で一人暮らしをしていたときは本屋の文庫本コーナーをうろうろしていた私ですが、
私のよく行ってた本屋は、ラノベ系のレーベルは違う階にあったり、漫画の列に一緒にされてたり、
はたまた本とは認めねえぜぐらいの勢いでそもそも並んでなかったりして……
最近のラノベにはとんと疎いです。
かといって一昔前のラノベに詳しいのかといわれたらそうでもないのだけど!
デルフィニア戦記とか読んでたなぁ。なつかしい。

面白い小説があったら是非教えてください!
文庫化されているものだととても有難いです。


HS本編は続きから。おいしいハゲのお話(?)です。



「影閃だ! いらっしゃい!」
「おっす、チーロン! また来たぜ!」
 ティエルには嫌われた破戒僧だが、子供には好かれているのだろうか。相変わらず血糊のついた槍を担いではいるものの、意外なことに、嬉しそうに擦り寄ってくる男の子の頭を撫でてやる影閃の笑顔はおおらかで優しかった。ミィナに見せた下卑た笑みからは想像もつかない、善良な若者の顔をしていた。
「また塀の向こうに行ったのかい?」
「おうよ。今日も大猟だったぜ」
 店主は手際よく注文された「いつもの定食」を作る。外出先についてミィナとは違う聞き方をされた影閃だが、その答えはミィナへ返したものとまったく違わなかった。
「これ、おみやげ」
 影閃はカウンターの席につくと、大きな布の包みを店主に渡した。それを開いて店主は目を丸くする。店主の息子と同じくらいの大きさのオオトカゲが1匹と、コウモリが5匹。おそらく影閃の今日の「狩り」の成果だろう。今しがた、アシュリオたちの食卓に並んでいた食材と同じものだ。
「こんなの自分で仕入れるから、お前さんはこんな危ないことをしちゃいかんと言っているのに」
 店主は呆れたようでいて、声の調子は温かかった。
「俺だって何回も言ってるぜ? 狩りは俺の趣味だってよ。せっかく狩ったんで、ついでに持ってきてやってるだけのことよ」
「何が狩りだ。魚でさえ食えんやつが」
「うるせえなぁ。おっちゃんは四の五の言わずに取っときゃいいんだよ。そんなデカさのオオトカゲ、武装商人でもそうそう狩ってこられねえだろ?」
「それを殺生厳禁の僧侶様が捕まえてくるんだから、世の中おかしなもんだな」
「ハハハ、言えてらぁ」
 注文された定食ができあがった。白飯と、大きな豆腐の乗ったサラダと、芋の入った汁物だ。動物の肉はひとかけらも入っていない。
「いただきます」
 影閃は行儀良く食べ始めた。アシュリオたちが見ているのには、いまだ気がついていないようだ。
「……なあ、影閃。気持ちは嬉しいけどな、こんなこと、もう止めたほうがいいぞ」
 店主が重い調子で言った。影閃は黙って食べている。
「今日だって本当は、あの馬鹿でかい化物たちと戦ってたんだろう? お前ひとりで頑張ったところで、何になるっていうんだ。勝てっこないぞ」
「やめてくれよ。せっかくのメシがまずくならぁ」
 影閃はまともに取り合う気がないようだった。店主は小さくため息をついて、出刃包丁を振るい出した。影閃の持って来た「獲物」が、「食材」に変わる音だ。まな板を叩く乾いた音が高く響く。影閃も黙々と料理を口に運んでいる。
 アシュリオたちはじっと聞き耳を立てていた。馬鹿でかい化物、とは何のことだろう。モンスターのことだろうか? ミィナの前では、戒律を破って狩りに出かけたと言っていたが、本当は違うというのだろうか。
「……アイツには、今年だけでもう4人もやられてる。うち1人はチーロンよりももっとガキだった」
 高らかに鳴る包丁の音に紛れて、食事を終えた影閃が箸を置く。うつむいたまま、ふと漏らした呟きは、うって変わって真剣そのものだった。
「俺はガキの葬式だけは金輪際ごめんだ。僧院にちっちぇえ棺桶が運ばれてくるのはもう見たくねぇ」
 それを聞きとがめたかのように、包丁の音が一層高く響いた。オオトカゲの首がごろりと落ちて、それきり音は止んだ。
「だったら、僧院の奴らにもそう言えばいい。『俺はアルトゥール市民を守るために、モンスターの軍団と命がけで戦ってます』ってな! 戒律を破って狩りに出かけてるなんて嘘ついて、格好つけてるつもりか!」
 男の子が怯えた顔で父親を見上げる。父親は怒っているわけではないと、幼い息子にはまだ判別できないのだろう。
「嘘じゃねえさ」
 影閃は店主から顔を背けた。アシュリオにはかえってその顔がよく見える。
「モンスターだって俺たちだって、生きてることには変わりねえ。あいつらだって、同じ命じゃねえか」
 憂いを帯びた低い声と、紫の瞳。
 ――貴国の兵も我が兵も、すべて同じ命であろう?――
 忘れられない人の声が、姿が、脳裏に甦ったとき、アシュリオは跳ねるように立ち上がっていた。今まで自分以外に客はいないと思っていた影閃が、驚いた顔でこちらを見た。
「あれっ……あんたら、さっきの……?」
「何だ? 影閃、この人たちを知ってるのか?」
 アシュリオは影閃の瞳をじっと見つめた。影閃は立ち上がってこちらに歩み寄ってきた。
「おい、もしかして……今の話聞いちまったのかい」
「聞いた! 聞いたわよ! どういうこと? 狩りって言ってたのは、本当はモンスター退治ってこと!? それじゃあなた、本当はいい人なの!?」
 アシュリオが何か言うより先に、ティエルが影閃の正面へと躍り出た。
「なっ……違う違う! 俺、全然いい人じゃねえよ!」
「どうして? 自分で言うの恥ずかしいんだったら、私が大僧正さんに言ってあげるわ。本当はいいことしてるんだから、叱らないであげてって」
「冗談じゃねえ! 絶対誰にも言っちゃダメだ! な! な! 頼むよお嬢ちゃん」
 焦る影閃の目の前に、今度はゼノがにゅっと顔を突き出した。
「いいだろう。坊主、今聞いた事は黙っていてやろう。だが、条件がある」
「条件……?」
 ゼノは無表情のまま頷いた。
「俺たち3人をお前の部屋に泊めてくれ」
「はぁ!?」
「まだ今晩の宿が決まっていなかったのだ。俺はそのモンスターとやらにとても興味がある。詳しく話を聞かせてもらおうか」
 ティエルも持ち前の好奇心を発揮して、目をきらきらと輝かせている。影閃は諦めたように額を掻いた。
「……そう言われちゃあ仕方ないねぇ。ただし、俺の部屋ってのは僧院の地下にある反省室だ。4人も入ったら狭っ苦しいにちげえねえけど、それはご了承願いたいぜ」
 つまり、ティエルは影閃の行いに、ゼノはモンスターという存在に興味を抱いたのだ。アシュリオは何も言わなかったが、もちろん反対はしない。影閃とユエターチュンと関係があるのかないのか、どうしても知りたかったのだ。それに、宿代がタダで済むというのは、吝嗇家の彼にとっては願ってもない話なのだった。

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2011'07'03(Sun)18:32 [ 本編/ヘヴンズ・セヴン ] . . TOP ▲