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ツイッターお題小説/「小説家とその弟」
2回目!

阿波さんは『羽、封印、守護者をテーマ・モチーフにした、主人公が兄弟』の物語を書いてください。
shindanmaker.com/157644

とのことでした。
まず言っておきますと、羽根も封印も守護者もムリヤリぶっこみました(笑)
続きから。


その時代、兄はそれなりに名の売れた小説家だった。
弟は秘書を務め、身体の弱い兄を助けていた。
贅沢さえしなければ、二人が一生暮らせるくらいの貯えはすでにあった。

兄は執筆に際して、決まって隣国製の羽根ペンしか使わなかった。
厳選された雁の羽根と、熟練の職人によって作られた最高級品だ。
それが兄の唯一の贅沢であった。
それがないと、兄はどうしても小説を書けないのだという。
羽根ペンを取り寄せるのは、弟の仕事だった。

ところが隣国との戦争が始まり、あの羽根ペンは入手不可能になった。
「兄さん、お願いですから、他の羽根ペンで我慢してください」
「嫌だ、どうしてもあのペンでないと駄目なのだ」
兄はすでに新作の構想をノートにメモしていた。
そのときは別の安いペンで済ませていた。
しかし原稿に清書すると、あのペンと書き味がまるで違うのが気になって仕方がない。
それで言葉が出てこなくなるのだ、と兄は言った。

戦争はますます激化した。
兄は徴兵されなかったが、弟は戦地へ送られることとなった。
兄は安物のペンで毎日弟に手紙を書いた。
弟からの返事もたびたび届いた。
しかし、二人が離れ離れになってから数ヶ月後、隣国からは「飛行機」という新型の兵器が空を飛んできて、兄の住んでいる街に爆弾を落としていくようになった。
そのうち弟は国境の守備隊に配属され、手紙を書く暇がなくなってしまった。
兄も、手紙を送らなくなった。


やがて戦争は終わり、兄弟の国は勝利した。
弟は無事に生還した。
兄弟の家があった場所は、焼け野原になっていた。
「隣の国から羽根ペンを山ほど略奪してきてくれたかね?」
弟が振り返ると、そこに兄がいた。
ずいぶんくたびれた姿になっていたが、兄もまた空襲を生き抜いていた。
「まさか。そんな暇なかったですよ」
二人は抱き合って再会を喜んだ。
「そうそう、お前に手紙を書きためていたんだ。読んでくれるかい」
兄は封蝋で閉じられた重たい封筒を取り出した。
弟が封を開けると、新作小説の原稿がそこに入っていた。
兄はこう言った。
「私に足りなかったのは質の良い羽根ペンではない、だれかに読んで欲しいという気持ちだったのだ」
その小説は出版後またたく間にベストセラーとなり、いまでも世界中で読み継がれている。

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2013'05'26(Sun)00:03 [ その他小説 ] . . TOP ▲
    


     


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