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#リプくれた人のキャラにうちのキャラが失恋する(むーうた)
学戦です。
ウイルスソフトにはじかれて、いつも使ってるtwishortにはいれないので、こちらに。
あとでツイショにあげなおします。
お久しぶり更新がこんな事情って(笑)

ツイッタのタグのやつ。
星の夢さん宅のむーさん(月神夢吐さん)おかりしました。
接点がなかなか見つからないので、いろいろ捏造しましたが
ifだと思って大目に見てやってください……



続きから。


 わたしがツキガミさんの訪れを待ちこがれていたのは、まだ孤児院の窓から見える観覧車にあこがれていた頃のことだった。
 ツキガミさんは、ふしぎなかっこうをしていた。ふんわりと大きなリボンタイ。黄金色の歯車が飾りつけられたシルクハット。レンズが片方だけしかないメガネ。頬には赤い模様が描かれていたように思うけれど、もしかしたら傷痕だったのかもしれない。束ねられた長い後ろ髪は、毛先に近づくにつれて夜のとばりの藍色から雪原の白へと変わっていた。いま思えば奇抜なファッションだけど、当時のわたしにはツキガミさんが夢の世界の住人そのもののようにみえた。
 夢の世界。それは、幼いわたしにとって窓から見える遊園地だった。観覧車は、そのシンボルだった。孤児院からでも、色とりどりのゴンドラがゆっくりとめぐっているのがみえた。夜には美しくライトアップされ、星のようにきらめいていた。
 観覧車は、近いようで遠かった。
 きっとツキガミさんは、あそこに住んでいるんだわ。
 わたしはそう思っていた。
 ツキガミさんは、ほんのときたま、気まぐれに孤児院にやってきた。先生たちと何か話をしていたようだけど、詳しくはわからない。
 でも、ツキガミさんが何をしに来たのかなんて、わたしたちにはどうでもよかった。わたしたちの関心は、ツキガミさんが持ってきてくれるすてきなおみやげにあった。
 おみやげは新品のおもちゃや絵本のほか、ほっぺたが落ちそうなくらいおいしいお菓子のときもあった。孤児院はとても貧しく、クリスマスでも子どもでさえひと口で食べ終わってしまうような小さなケーキがどうにか出るくらいだったから、ふわふわでとろとろのショートケーキや、名前も知らないカラフルな洋菓子に、わたしたちは涙が出るほど喜んだのだった。
 けれども、年長の子どもたちは、ツキガミさんの訪れを決して喜ばなかった。
「ツキガミさんと目を合わせちゃだめよ。あの人に気に入られたら、連れてかれてこわい目にあうんだから」
 ある日、中学生のお姉さんがわたしたちにそう言った。お姉さんは、つややかな黒髪のロングヘアーで、大人っぽくてきれいな人だった。
 ツキガミさんがおみやげをくれるのは、わたしたちに油断させるためだというのだ。それを聞いて、多くの子どもたちは震え上がり、もうツキガミさんが来るのを心待ちにする子はいなくなってしまった。
 けれども、わたしだけはちがっていた。
 ツキガミさんなら、ここからわたしを連れ出してくれるかもしれない。
 こわい目にあうと言われても、わたしはなんとも思わなかった。この、貧しくて息苦しい孤児院よりもひどい場所があるはずがないと思っていたからだ。
 お姉さんが言うには、実際に、ツキガミさんが来た直後にいなくなった子が何人かいたらしかった。
 やがて、そのお姉さんも、いつの間にか孤児院からいなくなった。先生に聞いてもお茶をにごすだけで、詳しい事情は教えてもらえなかった。
 たんに里親が見つかって巣立っていっただけなのかもしれなかったが、わたしはそうではないと確信していた。
 ツキガミさんが、お姉さんを連れて行ったにちがいない。
 わたしは、どうすればツキガミさんに気に入ってもらえるかを考えた。その手がかりになるのが、いなくなったお姉さんだった。ツキガミさんは、あのお姉さんのような子がすきなのだ。それなら、あのお姉さんのまねをすればいいのだ。
 わたしは記憶にあるお姉さんのしぐさや話しかたをまねた。そして、お姉さんのように髪を伸ばすことにした。わたしがそのとき思い出したのは、おとぎ話のラプンツェルだった。わたしがラプンツェルで、ツキガミさんが王子さまだ。長く伸びたわたしの髪をつたって、ツキガミさんが会いに来てくれるのを夢みていた。この髪が、あの観覧車のところまでとどけばいいと思った。
 わたしだけがツキガミさんを待っていた。
 それなのに、なかなかツキガミさんは現れなかった。髪がお姉さんの長さをこえても、ツキガミさんは来なかった。
 わたしはひたすら待った。窓の外、はるかに遠い観覧車をみつめながら、心の中でツキガミさんに呼びかけた。
 はやくわたしに会いに来て。
 そして、ここから連れ出して。

 けれども、待てど暮らせど、ツキガミさんは孤児院には現れなかった。
 どうしてわたしを連れて行ってくれないの?
 やがて、観覧車は永遠に動きを止め、わたしの夢の世界は、息絶えた。
 月日はさらに流れ、わたしも白軍の学生兵となり、孤児院を去った。
 もう二度と、ツキガミさんと会うことはないだろう。
 会う必要もなくなった。
 孤児院を出て、わたしは白軍の仲間と、ささやかながら不自由のない暮らしを得られたのだから。
 そう、思っていた。


「本日の黒軍合同演習でお世話になる教官を紹介する」
 それなのに――どうして。
「斬撃武器の指導をしてくださる月神教官だ」


 わたしは無意識のうちに、短くなった髪に触れていた。(了)

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2015'01'10(Sat)00:12 [ 学生戦争 ] . . TOP ▲