Our York Bar  
06≪ 2017| 1234567891011121314151617181920212223242526272829303107/ ≫08
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--'--'--(--)--:-- [ スポンサー広告 ] . . TOP ▲
【読了報告】まるた曜子『淅瀝の森で君を愛す』
*文字リンクの先はそれぞれテキレボ5のwebカタログページです

今回はまるた曜子さんの『淅瀝の森で君を愛す』(以下「淅瀝」)です。
まるたさんのご本は『僕の真摯な魔女』につづいて二冊目です。
「せきれき」と読むこの見慣れない熟語の意味は、冒頭に書かれています。
(広辞苑からの引用は作者、改行は私によるものです)

 ①雨雪や風の音。
 ②落葉の音。
 ③寂しいさま。
 (広辞苑 第六版)


読前に、あらすじや他の方の感想などから受けた「淅瀝」の率直な第一印象は「重そうなお話だな」という感じでした。
さんずいが並んだ難しい熟語(※アホの見解です)や、青を基調とした美しい表紙絵からも、なんとなく小雨が上がった後の、少しぬかるんだ小道を踏みしめて森へ分け入るような物語を想像していました。
(私にとっては、お話の重さはハードルにならないどころか、むしろ歓迎です。自身が目下軽薄な人生を送り続けているフレンズだからですかね! すごーい!)(※元ネタ知らないフレンズ)

たしかに、子どもに対する性的虐待とアセクシャルを扱った本作は、かなり重いテーマを扱っているといえるでしょう。
しかし、実際に読んだ感想はまた違ったところにありました。
語弊があるのを承知でいえば、私にとって「淅瀝」は、重さはありつつもスリリングで面白い物語でした。
テーマについて言及された素晴らしい感想はすでにいくつか出ていますので、ここでは作品の面白さに主眼を置いた感想を、不謹慎のそしりを覚悟の上で書いてみたいと思います。
もしも、「淅瀝」に対して「重そう」という印象をお持ちのために尻込みしている方がいらっしゃるなら、私の感想にもお目通しいただけたらと思います。

続きからです。









webカタログのあらすじに「惑う子供達の20年の漂泊」とあるように、「淅瀝」は「まお」(舞生)となあ(夏生)の20年にもわたる関係を描いた作品です。
その間に、なあがまおに見せる顔は様々に変化していきます。
まおが大学生になって一人暮らしを始めたのをきっかけに、天使のようなかわいい《弟》だったなあが「こわい」一面を見せ、ある事件が起きてまおは深く傷つきます。
なあはまおに強い執着を見せますが、まおにはなぜそうなるのかが理解できません。
この時期のなあは、本当に怖いです。まおがなあから離れようとしても追ってきます。
その後まおはなあが性的虐待を受けて育ってきた事実を知ることになりますが、だからといって怖さがなくなるわけではなく、より深い悩みを抱えて苦しむことになります。
重い? そうかもしれません。

ですが私の率直な感想を言うと、ものすごく面白かったんです。
得体の知れないなあが怖くて、ハラハラドキドキしながら読みました。
「どうしてなあはこんなことをするの? これからどうなるの?」と、なあの理解しがたい行動原理が読み手の興味を牽引する魅力にもなっているのです。
まおの気持ちを考えると本当に本当に申し訳ないんですけども、私はするすると読んでしまって、ページをめくる手が止まりませんでした。
(あれっ……私サイコパスみたいな感想書いてません? 大丈夫かな?)

もしこの部分だけ切り取って、なあの怖さを強調して描いたなら、サスペンスかスリラーとしてジャンル分けされるかもしれません。
やろうと思えばできると思うんですよね。性的虐待を受けた子どもが歪んで成長して無邪気なストーカーになり、主人公が怖い目に遭って、なんなら悲劇的な結末でも用意して「なんて可哀想な子たち……」と読者をやるせない気分にさせて、「社会派」と銘打つことも。
それはそれでいい作品になるかもしれませんが、でもそうしなかったのが、まるたさんのものすごいところだと思います。
まおがある対策をとってなあから離れることに成功し、この「怖さ」がひと段落ついても、ページはまだ半分ほど残っています。
ここまで読んだら、「これから二人はどうなるの?」ということが気になって仕方なくなっているはずです。
さらにもう一つ、二つ、重いけれど面白い展開が待っていますよ。
(いよいよサイコパスじみてきましたね私……?)

シリアスで重いテーマなのに、あまり湿っぽい感じがせずにどんどん読めてしまうのは、まおが苦しみながらも自己憐憫に逃げず、停滞せず、なあにも自分にも真摯に、また冷静に向き合おうとするからだと思います。まおはそれができるだけの賢さと芯の強さと、深い愛情を持っている女性として描かれています。
それはたぶん、まるたさんがまあとなおを「可哀想」という目で見ていないからだと思います。
だから読んでいる私も、二人がどうか幸せになりますようにと祈るような気持ちで読むことができました。
「可哀想」という同情は、優しいけれど、なんの解決ももたらしません。二人がもがき苦しみながらひとつの結論を選び取るまで、作者としてとことん付き合ったまるたさんは、本当にすごい作家さんだなあと、心の底から思うのです。

最後に、面倒見のいい上杉さんが素敵でした(*´Д`)




まるた曜子さんのサイト「博物館リュボーフィ」

まるた曜子さんのTwitterはこちらです。

スポンサーサイト

2017'03'10(Fri)23:16 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
    


     


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。