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【読了報告】永坂暖日『竜の舞い降りる村』
永坂暖日さんの短編集『竜の舞い降りる村』を読みました。
こちらは4つのファンタジー小説が収録された短編集です。

先日行われたテキレボ5ではなく、昨年秋のテキレボ4の戦利品です。
3月中に読了していたのですが、テキレボ準備でバタバタしておりまして、読了ツイートが精一杯でした。
ちなみに本作はテキレボ5にて完売とのことです。入手できてラッキーでした……!
ヨタ話と感想は続きからです。







よい短編小説とは、どんな小説でしょうか。
日本文学における短編小説の名作……といえば、高校時代に芥川龍之介の「羅生門」を習った方、多いかと思います。
ご存知の通り、「羅生門」は「下人の行方は、誰も知らない。」という一文で終わっていますが、私が通っていた高校では、さてこの後下人がどうなったか、続きを書いてみましょう――という宿題が出ました。
(芥川は何度か改稿した末、この結びに落ち着いたようですが、それはまた別の話なので置いときます)

いろんな子がいてとても面白かったのを覚えています。
下人が美少女と出会って恋に落ちるも悲恋に終わる、ケータイ小説女子。
作者が登場し続きが思いつかない言い訳で作文用紙を埋めたメタ男子。
20枚を超える大作を書いて(※手書きです)皆にドン引きされた創作クラスタ(?)男子、などなど。
ちなみに私はというと、下人が元の主人の家にある蔵に高価な仏像があったのを思い出して盗みに入るが、主人も下人に暇を出すほど困窮していたためすでに売られていて蔵は空になっており、数ヶ月後羅生門であの老婆が下人の服を着ている……という話を書いたと思います。
いやなJKだな……。

このような宿題が成立するのは、わずか6000字程度の「羅生門」に、読者が自由に想像する余地が与えられているからだと思います。
一口に短編小説といってもいろいろありますが、短い文章の中で時間的・空間的な広がりを感じられて、最後に余韻を残し書かれていないことまで想像を膨らませることができる短編は、よい短編と言っていいでしょう。


そういう意味で、永坂さんの『竜の舞い降りる村』は、間違いなくよい短編集です。
文章は簡明ながらも決して無愛想な説明文ではなく、ファンタジーの世界観を余すところなく伝えてくれます。
郵便が竜に姿を変えて運ばれる王国、砂漠に生き風を操る《砂の民》、腹違いの王女姉妹の政略結婚(イイネ!!)、「雪人」と人間の禁じられた交流……。
どれも短いお話で舞台も様々ですが、そこに生きる人々の「歴史」がしっかり感じられるのです。

しかも永坂さんは少しも書きすぎることなく、絶妙なさじ加減でお話に幕を引きます。
(中でも「偽られた王女」の終わり方が、すごく粋で大好きです)
ネタバレになるので詳しくは言えませんが、たとえば「二人は末永く幸せに暮らしました」ではなく、「幸せに暮らしているらしい」で終わるんですね。
てことは、本当は幸せじゃない可能性もあるんですよ!(ひねくれたモノの見かた)
「幸せに暮らしましたとさ」と書かれていたら、「それはよかったね」で終わりですが、「どうやら幸せに暮らしているみたいだなあ」と自発的に思えたなら、読者にとってそれはもう他人事ではありません。

ファンタジーの舞台設定も素敵なのですが、描写の軸足は葛藤する主人公の心情にあるので、現実とは違う世界を一緒に体感するような気持ちで読めました。
普段あまりファンタジーは読まないよ、という方でも楽しめる作品集ではないかと思います。
ぜひお手に取ってみてください……と、オススメしたいのですが、完売なのでした……。
(再版もしないとおっしゃっていたような……)
買っておけばよかった~! とお嘆きの方、代わりにテキレボ5にて初頒布された永坂さんの短編集『2013-2015』はいかがでしょう。
A5サイズ204ページ超え、短編52本で700円はお得だと思うのですよ……!
機会がありましたら、ぜひお手にとってみてください。

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2017'04'06(Thu)20:39 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲