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【読了報告】永坂暖日『嘘つき王女と隻腕の傭兵』
永坂暖日さん『嘘つき王女と隻腕の傭兵』を読みました。
テキレボ6での戦利品です。
11/23の文フリ東京でも入手できます! →D13 「夢想叙事」>『嘘つき王女と隻腕の傭兵』
感想前に大好きな映画の話から始めようかと思ったんですが、ちょっとオフが立て込んでおりますので今日は脱線せずに参ります。
いつもそうすりゃいいのにな!(笑)

「荒い呼吸をして空気が通るたび、喉がしみるように痛い。」(本文4ページ)

物語は、緊迫感に満ちた逃亡劇から始まります。
(痛覚や触覚など、全体を通して身体感覚に関する描写が印象的です)
王女イフェリカの祖国ヴェンレイディールは、先ごろ戦で隣国リューアティンに敗れ、王族はみな処刑されてしまいました。
魔法を学ぶためリューアティンに留学していたイフェリカも、懸賞金をかけられ命を狙われています。

イフェリカにはどうしても叶えたい望みがありました。
ヴェンレイディールのどこかにあるはずの、家族のお墓を見つけ出すことです。
しかしイフェリカはいまやお尋ね者。ひとりではとうてい祖国に帰れそうもありません。
そこで墓参りまでの護衛を依頼した相手が、傭兵のハルダーです。

「隻腕の傭兵」ハルダーの右腕は義手です。
過去の護衛依頼に失敗した際、ある強敵によって切り落とされてしまったためです。
義手を作ってくれた女魔術師キシルを通じて、ハルダーは(渋々)危険な護衛任務に身を投じることになります。

ハルダーが「隻腕の傭兵」なら、イフェリカが「嘘つき王女」なのだろう、と予想がつきますよね。
ところが、イフェリカは嘘つきとは程遠い正直者なのです。
「王女か?」と聞かれて「はい」と答えてしまいますし、偽名で呼ばれても返事できないと頑なに主張しさえします。
しかも冒頭では追手の目をくらますためにつかっていた魔法も、全然使いません。

これだけ書くと、イフェリカがわがままなお荷物ヒロインのように思われてしまうかもしれませんが、実際は健気でひたむきな、守るに値する少女として丁寧に描写されていて、むしろ「イフェリカには何か事情があるのかな? どうしてそこまでしてお墓参りがしたいんだろう? タイトルはどういう意味なんだろう?」と気になってしまいます。
そのへんをここで言及するのは野暮というものなので、どうぞ本編でお確かめください。
(わたしは完全にやられました。。。)

プロットの主軸はもちろんお墓探しですが、これはハルダーの再起の物語でもあると思います。
キシルが作ったハルダーの義手は、はじめ取り返しのつかない失敗の象徴として表れます。「守りきれなかったこと」に囚われていたハルダーが、イフェリカとの出会いを通じて「出会えたこと」そのものに目を向けられるようになっていく――物語が終わるとき、義手は序盤とは違った意味を持っています。
痛みは簡単に消えなくても、それでも少し前を向けるような幕引きに胸が熱くなりました。
文フリ東京に行かれる方、ぜひお手に取ってみてください。
(関西の方は、来年1月の文フリ京都でも手に入るかなと思います)
掛け値なしにおすすめですよ!
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2017'11'15(Wed)23:29 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲