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【読了報告】里見透『鳴き沙のアルフェッカ』
里見透さんの『鳴き沙のアルフェッカ』を読みました。
コミティア122の戦利品です。

舞台は、イフティラームという海に面した恵み豊かな国です。
この国では毎年春雷が鳴ってから五日後に「海神祭」が行われ、その年に十五歳(成人)になる若者たちの中から試合に勝ち残った者が祭主に選ばれます。
一年前、祭主の有力候補だったのは、首長の後継者で宗主国ダフシャの王族の血を引くカラヤと、もとは異国の奴隷だったイスタバルの二人。
境遇は違えど外からやって来た二人の少年は、同じイフティラームで成長した親友同士でした。
ところが、二人が対決したとき、カラヤはイスタバルの思わぬ罠にかかり……といったお話です。
(分かる方には、すでに私が大好きそうな感じだと察しがつくかと思います……)

物語は現在と一年前を行き来する形で紡がれます。
序章に現れる十六歳になったカラヤは、苛立ちと重苦しい雰囲気を感じさせて近寄りがたそうな雰囲気。
(ここの情景描写がカラヤの心情をすごく見事に象徴していてすごいなあ、と思いました、という小並感)
しかし続く第一章、一年前の彼はとても快活な少年で、その落差に胸が痛みます。
カラヤの心には、親友イスタバルの裏切りと不可解な死が影を落としていました。

具体的な言及はしていませんが、これ以上はそこそこネタバレしていますので一応畳みます。





ダフシャとイフティラームの間で難しい立場に置かれながらも、親友の死の真相を探ろうとするカラヤが健気でした。
それは結果的にカラヤをイフティラームのカラヤたらしめるために必要な通過儀礼だったのかな、と思います。
彼、大人びているようだけど、まだ十六歳なんですよね……。
「イスタバルは卑怯な裏切り者じゃないよね……?」と半ば信じ、半ば祈るように読みました。
そしてその真相を知ったとき、カラヤの手に残された――イフティラームの春雷にも似た――傷痕は、全く違う意味合いを持ったものに変わっていました。
一つの星座を「アルフェッカ」「ゲンマ」と違う名で呼んでいた二人は、同じイフティラームの勇士として生涯共にあるのだと思います。
率直に言えば、もっともっと読みたかったなあという気持ちもあるのですが、里見さんの読みやすい文体と奥行きのある世界観だからこそですね。

(あっ、あとヴィラちゃん好きだなあ……凛としてて媚びなくて……)

それから! ホジョイさんによる装画が本当に素敵でした。
章扉(っていうのかな)やカバーの折り返し、中表紙まで丁寧ですごい……。
隅々まで素晴らしい一冊でした。
関連作『外つ国のゲンマ』もぜひ読みたいです。
か、買えるといいな……( ;∀;)

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2017'12'11(Mon)22:49 [ 普通の記事 ] . . TOP ▲