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【読了報告】青波零也『霧世界報告』
青波零也さんの『霧世界報告』を読みました。
コミティア122の戦利品です。

空と海の区別なく、霧に包まれた世界に生きる人々を描いた掌編集です。
”The Misty Miniascape Report”という英語題の通り、霧世界は箱庭的世界といえます。
収録された全20編は、翅翼艇(エリトラ)を駆るゲイルたち霧航士(ミストノート)の物語と、幽霊船に漂着した少女コルネリアと船長の物語、どうやら私たちと同じ世界から迷い込んでしまったらしい女子高生アヤと魔法使いシロさんの物語の3つに大別されます。

私にとって、このご本の感想を書くのはとても難しいのです……
なにしろ性癖を刺されすぎました。メッタ刺しです。
死人に口なしというくらいですから、感想を書くのなんかもっと無理です。
私のしかばねの横には、血文字で「クソエモペンギン太郎」と書いてあります。
いまわの際に鼻血で書いたらしいです。
(逆説的に感想になってません?)(なってません)

ちなみに「クソエモペンギン太郎」は私が考えた言葉ではありません。
読んだ方が作中のとあるキャラクターにつけた愛称(……愛称?)のようです。
キャラクターに自然と愛称がつくほど親しまれるのってすごいなと思います。
それだけキャラクターが魅力的だということですもんね。ええ、本当に魅力的でした。
(どう頑張っても小並感しか出ない)(ただのしかばねのようだ)

もうちょっと頑張りましょうか……。
『霧世界報告』の魅力は独創的な世界観や鮮やかに描き分けられたキャラクターたち、そして、その構成だと思います。
収録作の多くは種々のアンソロジーに掲載されたものだったり、単独でコピー本として先行頒布されたものだったりするようなのですが、少しずつ物語のすがたが見えてくるように掲載順が工夫されており、読み心地はむしろ長編に近いように思います。
そしてこの構成が、「霧世界」を体現しているようにも思いました。
たとえば、青空を夢見るゲイルとオズワルドの物語は飛行機乗りのロマンと哀愁に満ちていて胸が高鳴るのですが、読み進めていくうちに彼らの間に重大な事件が起こったことが察せられます。
一体何があったのか……見えるようで、全ては見えなくて、その察させ具合(?)が絶妙で、続刊が読みたくて仕方なくなってしまいます!
真相は来年7/16のテキレボ7での新刊を待て! ということのようですが、2/11のコミティア123でも関連作がお目見えするようで、いまからとても楽しみです。

ここでは性癖のため霧航士パートに偏った感想ばかりになってしまいましたが、コルネリアと船長のお話やアヤとシロさんのお話もまた違った雰囲気で非常にイイ感じですしこの世界観そのものが性癖なので、いずれもまとまった長いお話が出たらチェックしたいです。

いつも以上に駄文で申し訳ないです。ペンギンの……せいです……(遺言)
2017'12'07(Thu)23:33 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】佐々木海月『フリンジラ・モンテ・フリンジラ』
佐々木海月さん『フリンジラ・モンテ・フリンジラ』を読みました。
あまぶん(夏祭り)での戦利品です。
耳に残る印象的なタイトルは、主人公の名前にもなっている「あとり」という渡り鳥の学名だそうです。

主人公の「僕」――あとりのもとへ、カラスが別れを告げに来ます。
カラスに乞われて、「僕」はコウという少年の話をします。

コウ――渡辺コウ(略してナベコウ)は中学時代の同級生だった渡辺さんの弟です。
仕事で身体を壊し、いまはもう誰もいなくなった東北の実家へ帰った「僕」は、渡辺さんからコウの家庭教師を依頼されます。

アトリもナベコウも渡り鳥の名前ですが、ナベコウは本来日本には来ない「迷鳥」なのだそうです。(Wikipedia調べ)
このお話は、出会うはずのなかった「僕」とコウの出会い、そして何よりも別れの物語です。

ここから先は主に自分の実感についての話で、まあそれを感想というのでしょうが、この作品の紹介文としての機能はあまりない文章になっております。
ご興味があればどうぞ。
>> ReadMore
2017'11'29(Wed)09:58 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】永坂暖日『嘘つき王女と隻腕の傭兵』
永坂暖日さん『嘘つき王女と隻腕の傭兵』を読みました。
テキレボ6での戦利品です。
11/23の文フリ東京でも入手できます! →D13 「夢想叙事」>『嘘つき王女と隻腕の傭兵』
感想前に大好きな映画の話から始めようかと思ったんですが、ちょっとオフが立て込んでおりますので今日は脱線せずに参ります。
いつもそうすりゃいいのにな!(笑)

「荒い呼吸をして空気が通るたび、喉がしみるように痛い。」(本文4ページ)

物語は、緊迫感に満ちた逃亡劇から始まります。
(痛覚や触覚など、全体を通して身体感覚に関する描写が印象的です)
王女イフェリカの祖国ヴェンレイディールは、先ごろ戦で隣国リューアティンに敗れ、王族はみな処刑されてしまいました。
魔法を学ぶためリューアティンに留学していたイフェリカも、懸賞金をかけられ命を狙われています。

イフェリカにはどうしても叶えたい望みがありました。
ヴェンレイディールのどこかにあるはずの、家族のお墓を見つけ出すことです。
しかしイフェリカはいまやお尋ね者。ひとりではとうてい祖国に帰れそうもありません。
そこで墓参りまでの護衛を依頼した相手が、傭兵のハルダーです。

「隻腕の傭兵」ハルダーの右腕は義手です。
過去の護衛依頼に失敗した際、ある強敵によって切り落とされてしまったためです。
義手を作ってくれた女魔術師キシルを通じて、ハルダーは(渋々)危険な護衛任務に身を投じることになります。

ハルダーが「隻腕の傭兵」なら、イフェリカが「嘘つき王女」なのだろう、と予想がつきますよね。
ところが、イフェリカは嘘つきとは程遠い正直者なのです。
「王女か?」と聞かれて「はい」と答えてしまいますし、偽名で呼ばれても返事できないと頑なに主張しさえします。
しかも冒頭では追手の目をくらますためにつかっていた魔法も、全然使いません。

これだけ書くと、イフェリカがわがままなお荷物ヒロインのように思われてしまうかもしれませんが、実際は健気でひたむきな、守るに値する少女として丁寧に描写されていて、むしろ「イフェリカには何か事情があるのかな? どうしてそこまでしてお墓参りがしたいんだろう? タイトルはどういう意味なんだろう?」と気になってしまいます。
そのへんをここで言及するのは野暮というものなので、どうぞ本編でお確かめください。
(わたしは完全にやられました。。。)

プロットの主軸はもちろんお墓探しですが、これはハルダーの再起の物語でもあると思います。
キシルが作ったハルダーの義手は、はじめ取り返しのつかない失敗の象徴として表れます。「守りきれなかったこと」に囚われていたハルダーが、イフェリカとの出会いを通じて「出会えたこと」そのものに目を向けられるようになっていく――物語が終わるとき、義手は序盤とは違った意味を持っています。
痛みは簡単に消えなくても、それでも少し前を向けるような幕引きに胸が熱くなりました。
文フリ東京に行かれる方、ぜひお手に取ってみてください。
(関西の方は、来年1月の文フリ京都でも手に入るかなと思います)
掛け値なしにおすすめですよ!
2017'11'15(Wed)23:29 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】永坂暖日『サボテンの子どもたち』
永坂暖日さん『サボテンの子どもたち』を読みました。
テキレボ6の戦利品です。
寺島家の三きょうだいを中心に展開する4編からなる連作短編集となっています。
こちらが永坂さんの 2017/11/23文学フリマ東京のカタログ です。
(しつこいようですが私も委託させていただいてます……)

感想文の前に、ひとによってインプット・アウトプットのしかたが違う、という話を。
(腕の組み方と手の組み方でどっちの手が上になるかで分かるとか、なんかそんなやつです←アバウト)
私は右脳で感覚的(なんとなく無根拠に)にインプット、左脳で論理的(理屈っぽく)にアウトプットする派らしいです。
そういうタイプの私が感想を書きます。前置き以上です。

ブラームスのワルツが聴きたくなった。
それが、『サボテンの子どもたち』読了後の感想です。
私が聴きたくなった曲はこちらです。全音さんの動画なので著作権も大丈夫なはず。

最近ではアフラックのCMにも使われていましたね。
短く素朴で、けれどもぬくもりに満ちた美しい曲で、私の大好きな曲のひとつです。
以上が右脳人間アワの感想でした。

ここから理屈っぽい阿波に補足説明させますね。(続きからです)
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2017'11'03(Fri)00:07 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲
【読了報告】並木陽『斜陽の国のルスダン』
並木陽さん『斜陽の国のルスダン』を読みました。
第0回静岡文学マルシェ (2016年6月) での戦利品です。
並木さんのご本を読んだのはこれが初めてです。
(ラジオドラマもありますが、とりあえずここでは原作についての読了報告です。)
※脱線しまくっているので感想文だけでいいわという方は次の赤字まで飛ばしてください……

※2018/1/30画像リンク追加(amazonの通販ページへリンクしています)


ここを読みに来られる方にはいまさら紹介の必要もないでしょうが、13世紀のグルジア女王・ルスダンの波乱に満ちた生涯を描いた作品です。
「いまいちピンと来ないなあ」という方のために先に言っておきますと、当時のグルジアと日本との間には大きな共通点があるんですよ!

と、まるでグルジアの歴史に詳しいかのような口ぶりですが……(笑)
数年前まで、私のグルジアについての知識は、「たぶんヨーロッパの東のほうで、なんとなく名前くらいは聞いたことがあるかもしんない」という程度でした。
たぶん日本人の大半は、私と同じようなものではないかと勝手に思っています。

その国のことを日本では公式に「ジョージア」と呼ぶようになったと知ったのは、2015年末に「独裁者と小さな孫」という映画を観たときです。
架空の国の独裁者(おじいちゃん)と孫(女装ショタ)の逃避行を描いた作品でした。
小さな孫が言う「あーんちゅけび!」という言葉がいまでも耳に残っています。字幕は「明かりをつけろ」だったか「明かりを消せ」だったか忘れてしまいましたが……あれがジョージア語なのでしょうか。
この映画をきっかけに、ジョージアという国に少し親近感が湧いてきた時期に『斜陽の国のルスダン』の存在を知り、翌年6月の静マルで購入させていただきました。

ちなみに2016年には「みかんの丘」「とうもろこしの島」という2本のジョージア映画が公開されています。いずれも、ジョージアとアブハジアとの間で起きた紛争が背景にある作品です。
どちらもすごくいい映画だったんですが、個人的には「みかんの丘」のほうが見やすかったです。「とうもろこしの島」はセリフがとても少なく、映画館でウトウトしてしまった記憶があります……。
3本ともソフト化されていますので、興味のある方はぜひご覧になってください。
せっかくだからこっちも画像リンクをのっけちゃうぞ。えいえい。

  

話は逸れましたが、ともかく、私にとってグルジアは非常に縁遠い国でした。
まして13世紀だなんて。
私は世界史もほとんど履修していませんし、当時のグルジアがどんな国だったのか全く知らない状態で、この本を手に取ったわけです。
世界史はさっぱりでも、日本史なら少し分かるかも、と学生時代の記憶を掘り起こしてみます。
鎌倉幕府の滅亡は1333年、「いちみさんざん」なんて暗記したなあ。13世紀というとその少し前か。
そういえばなんで鎌倉幕府って滅びたんだっけ――13世紀には、その一因となった大きな事件がありました。
そう、「元寇」です。げんこう!
(執権北条時宗が新刊を落として壁サーだった鎌倉幕府が崩壊するさまを想像し……ませんね)
日本は文永の役(1274)、弘安の役(1281)の二度にわたって元(モンゴル)の襲撃を受けました。
元と戦った御家人に褒美として所領を与えることができず、「御恩と奉公」が成立しなくなり鎌倉幕府滅亡の原因となった――というようなことが、私の教科書には書いてあった気がしますがいまはどうなのでしょう。

文永の役よりも少し前、グルジアもまたモンゴルの侵攻を受けています。
これが、先に書いた「グルジアと日本との大きな共通点」です。
日本では台風が来たおかげでモンゴル軍は敗退しましたが、グルジアではどうだったのでしょうか。
『斜陽の国のルスダン』は、ちょうどその時代を描いたお話です。
(ようやく続きから感想文です……)
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2017'08'28(Mon)18:16 [ 同人誌の感想 ] . . TOP ▲